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ランサムウェア 公開日:2026-06-23 読了:約8分 監修:セキュリティアナリスト

ランサムウェアとは?仕組み・感染経路・対策をやさしく解説

「データを人質に取られ、復旧したければ金銭を払え」と迫る攻撃は、組織向けの脅威として長年上位に位置づけられ、警察庁への被害報告も高い水準で続いています。専門知識がなくても要点がつかめるよう、ランサムウェアの正体・どこから入ってくるのか・何をすれば被害を防げるのかを、順を追ってやさしく整理します。

対象読者:中小企業の情報システム担当の方、経営層、そして「言葉は聞くけれど中身はよく分からない」という方。専門用語は初めて出てきたときに一言かみくだいて説明します。

30秒サマリー
  1. ランサムウェアは、PCやサーバーのデータを勝手に暗号化して使えなくし、復旧と引き換えに身代金(ランサム)を要求する不正プログラムです。
  2. 主な入口はフィッシングメールVPN機器・RDP(リモートデスクトップ=遠隔接続)の脆弱性・弱いパスワード、そして不正アクセス。最近は暗号化に加えてデータを盗んで「払わなければ公開する」と脅す二重恐喝が主流です。
  3. 最大の備えはオフライン(切り離した)バックアップ・多要素認証・速やかな脆弱性更新。身代金の支払いは推奨されず、復旧の保証もありません。慌てて払う前に、まず隔離と相談を。

そもそもランサムウェアとは

ランサムウェア(ransomware)は、「ransom(身代金)」と「software(ソフトウェア)」を合わせた言葉です。感染すると、パソコンやサーバーの中にあるファイルを暗号化して開けなくしたり、画面をロックして操作できなくしたりします。そのうえで「元に戻したければ金銭を払え」と要求してくる、悪意のあるプログラムの総称です。

たとえるなら、会社中の書類を勝手に金庫に入れて鍵をかけ、「鍵が欲しければお金を払え」と言ってくるようなものです。書類(データ)自体はそこにあるのに、業務では使えなくなる――この「使えなくする」ことで身動きを取れなくし、金銭を引き出すのが狙いです。

支払いに使われる金銭は暗号資産(仮想通貨)であることが多く、追跡を逃れる狙いがあります。攻撃者は世界中に分散し、攻撃の道具を貸し出す「サービス化(RaaS:Ransomware as a Service)」も広がっているため、高度な技術を持たない者でも攻撃に加わりやすくなっている、と指摘されています。

仕組み・なぜ起きるのか

多くのランサムウェア被害は、いきなりデータが暗号化されるわけではありません。攻撃者は、まず組織内に静かに侵入し、内部を調べて広がってから、最後にまとめて暗号化・脅迫を仕掛けます。代表的な流れは次の5段階です。

①侵入 メール・VPN/RDP 不正アクセス ②拡散 権限を奪い 社内へ横展開 ③暗号化 データを 使用不能に ¥ ④恐喝 身代金を 要求 ⑤公開脅迫 盗んだデータの 暴露の示唆
図:ランサムウェア攻撃の典型的な流れ(侵入 → 拡散 → 暗号化 → 恐喝 → 公開脅迫)。データの窃取は多くの場合、②拡散の段階で暗号化より先に行われます。

① 侵入:主な感染経路

攻撃者が組織に入り込む「入口」は、おおむね次の3つに集中していると報告されています。

フィッシングメール:実在の取引先や配送業者になりすました偽メールで、不正な添付ファイルやリンクを開かせ、最初の足がかりを作ります。
VPN機器・RDP(リモートデスクトップ)の脆弱性・弱い認証:在宅勤務などで使うリモート接続の機器に、修正されていない脆弱性(プログラムの欠陥)があったり、推測されやすいパスワードだったりすると、そこを突かれて侵入されます。近年の国内被害ではこの経路が特に多いとされています。
不正アクセス:どこかで漏れたID・パスワードの使い回しや、総当たりでのログイン突破などで、正規の入口から堂々と入られるケースです。

② 拡散:内部への横展開

侵入後、攻撃者はすぐに暗号化はしません。まず管理者の権限を奪い、社内の他のPCやサーバー、バックアップ装置の場所を調べ、被害を最大化できるよう静かに横へ広がります(横展開)。この段階で見つけて止められれば、被害は大きく抑えられます。

③ 暗号化 → ④ 恐喝

十分に広がったところで、一斉にファイルを暗号化して業務を止め、「復号鍵が欲しければ身代金を払え」という脅迫文(ランサムノート)を表示します。

⑤ 公開脅迫:二重恐喝(ダブルエクストーション)

近年の主流は二重恐喝(英語では double extortion)です。暗号化する前にデータを盗み出しておき、「払わなければ盗んだデータをインターネット上に公開する」と追加で脅します。これにより、たとえバックアップから復旧できても「情報漏えい」のリスクが残るため、被害者にさらに強い圧力がかかります。

国内の実例・傾向

ランサムウェアは、日本国内で長く件数の多い被害類型の一つとして注意喚起され続けています。IPA(情報処理推進機構)が毎年公表する「情報セキュリティ10大脅威」でも、組織向けの上位常連として取り上げられています。警察庁も、企業・団体からのランサムウェア被害の報告を継続的に集計・公表しています。

近年の傾向として、次の点が繰り返し指摘されています。

侵入経路はVPN機器やリモート接続が多い:警察庁の集計では、被害企業・団体への侵入経路としてVPN機器・RDP経由が大きな割合を占めると報告されています。
規模を問わず被害が出ている:大企業だけでなく、中小企業や医療・自治体など幅広い組織で被害が確認されています。
二重恐喝が一般化:暗号化に加えてデータ窃取・暴露を伴う手口が主流になっています。

※ 本記事では特定の企業名を挙げての断定は避けています。最新の件数・割合などの数値は、下記「参考情報・出典」の各機関が公表する最新版をご確認ください。

いま打つべき対策(チェックリスト)

「これさえやれば絶対に防げる」という単一の対策はありません。複数の備えを重ねて、入られにくくし・広げさせず・万一でも復旧できる状態を作ることが目標です。まずは上の 優先度:高 から着手することをおすすめします。

基本の対策チェックリスト

  • オフライン/隔離バックアップを取る優先度:高
    定期的にバックアップを取り、少なくとも1つはネットワークから切り離して保管します。暗号化被害から復旧できる「最後の砦」です。復元できるか定期的に試すことも重要です。
  • 多要素認証(MFA)を有効にする優先度:高
    VPN・リモート接続・管理者アカウント・クラウドサービスに、パスワード+もう一段の認証(ワンタイムコード等)を必須にします。パスワードを盗まれただけでは突破されにくくなります。なお、SMSやワンタイムコードにも回避の手口が報告されているため、可能であればフィッシング耐性の高い方式(パスキー/FIDO2)が理想です。
  • 脆弱性を速やかに更新する優先度:高
    VPN機器・OS・ソフトの修正プログラム(パッチ)を早めに適用します。特にインターネットに公開している機器は最優先で。
  • EDRなどで端末を監視する優先度:中
    EDR(端末の不審な挙動を検知して止める仕組み)を導入し、侵入後の「拡散」の段階で気づける目を持ちます。
  • 最小権限の原則を徹底する優先度:中
    利用者・端末に必要最小限の権限だけを与え、管理者権限の使い回しを避けます。攻撃者が奪える範囲を狭めます。
  • インシデント対応計画を用意する優先度:中
    「誰が・何を・どの順で」動くかを事前に決め、連絡先(社内・委託先・公的機関)を整理しておきます。年1回でも訓練すると、いざという時に動けます。

感染時の初動対応

  1. 感染した端末をネットワークから切り離す(LANケーブルを抜く/Wi-Fiを切る)。電源をいきなり落とすと証拠や復旧の手がかりが消える場合があるため、対応方針は専門家に相談しながら。
  2. むやみに再起動・初期化しない。被害範囲の把握と原因調査の前に消すと、再発防止ができません。
  3. 関係者・専門機関に連絡する。社内責任者、契約しているセキュリティ事業者、そして JPCERT/CC や IPA、必要に応じて警察に相談します。個人情報が絡む場合は個人情報保護委員会への報告も検討します。
  4. 慌てて身代金を払わない。支払ってもデータが戻る保証はなく、次の標的にされるおそれもあります(詳しくは下記)。

「身代金は払わない方針」が推奨される理由

公的機関は一般に、身代金の支払いを推奨していません。主な理由は次のとおりです。

・払ってもデータが完全に戻る保証はない(復号できない・一部しか戻らない例がある)。
・支払いは攻撃者の活動資金になり、新たな攻撃を助長する
・「払う組織」とみなされ、再び狙われるリスクがある。
・二重恐喝では、払っても盗まれたデータが本当に削除された確証は得られない

そのため、支払いを検討せざるを得ない状況に追い込まれないよう、事前のバックアップと多要素認証に投資しておくことが、結果的に最も合理的です。

よくある誤解

うちは小さい会社だから狙われない
攻撃の多くは「特定の標的を狙い撃ち」ではなく、脆弱な機器を機械的に探して入り込みます。規模に関係なく、対策の弱い組織が被害に遭っています。
バックアップを取っているから大丈夫
バックアップ自体が同じネットワーク上にあると一緒に暗号化されることがあります。切り離した(オフライン)保管と、実際に復元できるかの確認までセットで初めて備えになります。さらに二重恐喝では、復旧できても情報漏えいのリスクは残ります。
ウイルス対策ソフトを入れていれば防げる
従来型の対策ソフトだけでは、新しい手口や正規ツールの悪用を見逃すことがあります。多要素認証・脆弱性更新・EDR・バックアップなど、複数の備えを重ねることが大切です。

Future Secure Wave の視点

ランサムウェア対策は、高価な製品を一つ入れて終わり、というものではありません。私たちは、「入られにくくする」「広げさせない」「復旧できる」の3点を、いまの組織の体制・予算に合わせて優先順位をつけて積み上げることが、最も現実的だと考えています。まずは「バックアップは本当に切り離せているか」「リモート接続に多要素認証はかかっているか」の2点を確認するところから始めてみてください。

自社の備えに不安がありますか?

「何から手をつければいいか分からない」「いまの対策で十分か診断したい」――そんなときは、お気軽にご相談ください。現状にあわせて、優先順位を一緒に整理します。

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参考情報・出典

※ 各機関の公開ページにリンクしています(2026-06-23 時点で確認)。被害件数・割合などの数値を引用する際は、各機関が公表する最新版をご確認ください。